――『禁書目録Ⅱ』も最終回を迎えましたが、振り返ってみていかがでしたか。
阿部:基本的に『禁書目録』は相対的な敵、正義でも悪でもないキャラがたくさん出てく
るせいもあって、時には味方になり時には敵になって物語が進んでいくじゃないですか。
最初にインデックスに出会って、自分の記憶を失って、色んな事件に関わっては解決していく。その中で、上条さんがぶれずにやってきた結果なんでしょうね。気がつけば輪ができて、それが回を重ねるごとに広がっていく、そこがすごく魅力的ですよね。
井口:いろんな出会いがありましたよね……。1期で作られた輪が、2期でさらに広がって。私自身にとってもドラマCDから、10 代の頃からの付き合いになる作品ですからね。
アニメ化して、『超電磁砲』もアニメになって、第2期があってと、これまでの道のりが本当にひとつひとつ大きな喜びなんです。キャラクターであるインデックスも当麻や美琴たちと出会って絆を深めていったのと同様に、私自身も演じていく中でいろいろなことを学ばせてもらったし、何より楽しませていただいてるなあと。
阿部:インデックスは2期になって出番も増えたしね!
井口:戦いには1期は特に参加しなかったですもんね。
阿部:上条さん的には多分、戦闘には絶対に参加してほしくない、危ない目にはあってほしくないと思ってるんですけどね。それでも「頼る」っていうのかな、そういう面で信頼が生まれてきた気はしますね。
井口:そうそう、ふたりの信頼関係が深くなってきた。
阿部:「任せる」って、すごく難しいことだと思うんですよ。いくら一〇万三〇〇〇冊の魔道書を記憶してるといっても、インデックスは生身の女の子。その先にどんな敵が待っているかわからない状況で、心配だけど任せると言えたのは、新たな、もう一歩進んだ信頼の形なのかなって気はしましたね。
井口:離れ離れになったときには、当麻はインデックスを、インデックスは当麻を大丈夫かなって気にかけながら一生懸命突き進む姿がすごく印象に残っていて。戦う場面で今まで以上に一緒にいられる機会が増えたのも、信頼関係が深まった証だと思うんです。でも当麻は……、やっぱり不幸だと言いつつ、色んな女の子とも出会いますし。
――やっぱりそこは気になるんですね(笑)。
井口:そこは、やっぱり。美琴も2期になってずいぶんデレたのに気づかない、すごく鈍感なところは変わらないですけど、女性キャラも増えてきて……。インデックスというか井口としてというか、むーっと悩んでしまったり、何だかソワソワするところがたくさんあったんですよ。だからと言って、大覇星祭で噛み付くつもりがチュウをしてしまって照れるとか、ちょっと恋愛を意識してしまうと、もどかしいと言うよりも、そこはまだ見たくないっていう想いがあったりするんですよ。
阿部:めんどくさいなー、わからなくもないけど(笑)。
井口:2期後半のEDの最後のカット、袖をきゅってつまんで寝てる姿が、ドキドキ感に変わったらダメなんです! だいぶ変わっちゃうじゃないですか。あ、私むこうで寝るね……みたいなのは見たくないから。
阿部:それはそうね! まだいいかな。
井口:1期の当麻が飼い主でインデックスがペットと言ったら言いすぎですけど、お兄ちゃんになついてる感じから、パートナーとして当麻の横に立つようになった変化を感じられたなって。
――では、せっかくパートナーになれたふたりなので、お互いの好きなところ嫌いなところなどをうかがえれば。
阿部:はぁ~……
井口:ため息!(笑)
阿部:そうですねえ、働いてくれよと。
井口:わーひどい。あんなに戦いにすすんで参加してたのに!
阿部:いやほら、日々の生活で、家事とかさあ。
井口:ポテチとかずっと食べてそうですよね。スフィンクスと一緒に寝転がって。
阿部:ねえ、ホントだよ。ちょっとスフィンクスに唐揚げやろうもんなら、噛みついてきますからね。
井口:だって私も食べたい(笑)。
阿部:だって全部食っちゃうだろって、至極まっとうなことを言ってるつもりなんですけど!(笑)
――すごい心の叫びでしたよね。
井口:可愛かったなー。
阿部:可愛くねえ! そこは可愛くねえ!(笑)
井口:見てる分には……(笑)。
阿部:当事者はつらいと思うんだ。でもやっぱり、かわいいところは良いところなんですよね。天真爛漫で、かと思いきや修道女らしい献身的な姿を見せてくれたり、意外としっかりした信念を持ってたりするので、そのギャップはホントに面白いと思いますね。
井口:当麻はね……嫌いなところから言った方がいいかな?(笑)
――落としから上げましょう(笑)。
井口:嫌いと言うよりも「まったく…」って思うのは、女の子たちに無償の愛、見返りも求めずに助けたいから助けるところ。そこがすごく良いところなんですけど、それがゆえに問題を解決した後、女の子たちがちょっとホの字になっちゃう。さらにそれに気付かない。気付いちゃったら当麻じゃなくなるんですけど、そもそも何で女の子たちばっかりな
んだろ……。そんな様子は見ていてヤキモキするし、なにより、おうちで待ってるインデックスがおなかすかせてるかもしれないのに!
阿部:そこかい(笑)。
井口:もう、早く帰ってきて!みたいな(笑)。インデックス自身も救ってもらっているように、良くも悪くも見返りを求めず、後先考えずに戦いに行く姿は心配でもありかっこよかったりもして、複雑です。あと、インデックスのお世話をしてくれてうれしいので、もっとかまってほしい。
阿部:これ以上、構えと言うのか……。
井口:1日のうち、どのくらいかまってもらってるんだろ?(笑) 2期では一緒に戦う姿はたくさん見られたんですけど、大覇星祭みたいなイベントもない、ホントに普通の日常が見たいですよね。そこで当麻にいっぱい甘えて、ちゃんとヨシヨシしてもらいたいなって。最近、ヨシヨシ加減は割と足りてない気がするんですよ。
阿部:確かに戦いが多くて、あんまりほのぼのしてなかったね。
井口:もちろん、一方通行との「死ぬなよ、お前もな」みたいなカッコイイやり取りも見ていてキュンとはするんですけど、インデックスとしてはなんかツマンナイナーって。
阿部:ホントに構ってほしいんだなこの娘はっ!(笑)でも、確かに大覇星祭のときみたいに、すぐ行くからって言って待たせっぱなしだったりもしたしな……。上条さんが寂しげな笑顔で送り出すあたりも、悲しいけど良いシーンだなって。
井口:残念だったんですけど、普段見られないチアガール姿も見られたし、日常的な、インデックスらしいかわいい会話ができたのは、すごく楽しかったんですよ。
阿部:ああいう雰囲気は、番外編的にやる機会があればぜひやりたいですね。本編では毎回、何かしら事件が起こってしまうので、どうしても難しいですから。
――さて別のキャラクター、長い付き合いになるステイルについて。けっこう目の敵にしている上条さんにも優しいですよね。
阿部:甘い理想は捨てろっていうような物言いは、一見厳しいですけど、最終的にはそうするしかないんだからって、すごくこちらのことを思ってくれてたりするんですよね。姫神のときもそうで、彼自身も怒りを押し殺してそう言ってくれる。で最終的に上条さんの理想に付き合ってくれるし。
井口:そう、優しいの。ツンデレだね、あれは明らかに。
阿部:一緒に戦ってても、なんか息が合っちゃうんですよね。タックルのタイミングがばっちり同時だったりとか、反発してるつもりが連携しちゃったり。意外と似たもの同士なんだけど、インデックスを含めた立ち位置がちょっと違うから相容れない。もし出会いが出会いだったら親友になってたかもって気はしますね。
井口:走り出してコケちゃったり、意外とお茶目な面も2期になって見えてきて可愛いですね。もっと小萌先生とのやりとりも見てみたいですね。
阿部:姫神を助ける前の、この人がインデックスを助けてくれた人なんだっていうあの表情。ホントに尽きないインデックスへの愛が見える。
井口:でもインデックスはまったく覚えてない。
阿部:そうなんだよね。ホント魔性の女だよ!
井口:本人たちも言わないし。いつか、難しいけれどそのときの記憶が戻るのかなあ。でもステイルさんがインデックスを陰から見て幸せそうなところが好きなので、当麻と同じであんまり近づいてほしいけど近づいてほしくないっていう。
阿部:あーもう。わかるけどめんどくせえ。実は魔性の女なのは中の人だよ!(笑)
井口:いやーインデックス(笑)。でもそういう見ていてヤキモキする感じがいい。
阿部:そうそうそう。今のつかず離れずの、周りも含めた、わちゃっとした感じがすごく見てて微笑ましくて、いい感じ。だから特定の誰かって想像できない。
井口:美琴もそうだし、姫神もそうだよね。
阿部:美琴なんてドギマギしすぎだろって思うほど。
――ではそんな阿部さん、上条さんヒロイン遍歴について。2期の女性キャラクターたちについていってみましょう。まずはお好みのオルソラさんから。
井口:最初からクライマックスな感じで!
阿部:ここで燃え尽きてもいいですか?(笑)すごく献身的なザ・シスターさんって感じですよね。個人的にも一押しヒロインで、大好きなんですけど。やっぱりおっとりお姉さんっていいっすよねっていう。
井口:個人的な趣味をォー!(笑)
阿部:完全に個人的ですよ。あの包容力と母性は凄まじい。、それをあの遠藤さんが演じられて、うまく表現していただいて……。こら助けるわ!と思いました。
井口:雰囲気がぴったりなんですよね。アフレコ中も包まれっぱなしで幸せそうだった(笑)。
阿部:もちろん!(笑)
――で、同じシスターさんのアニェーゼさん。
阿部:アニェーゼは『法の書』編の決着のシーンかな。「終わりだ、アニェーゼ」っていうセリフに全てがあって、監督から哀れみを込めてっていう指示があったんです。なるほど、もうこんな悲しいことは終わりにしようってことなんだろうなって。もうその時点で、上条さんにとっては敵でありながらも救ってあげたい人のひとりだったんですよね。だから最初からアニェーゼもヒロインだったのかなと。
井口:「みんな救う」っていう難しいことを、当麻はやっちゃうんだよね。
阿部:病室で神裂にも言っている通り、たまたま敵だったっていうのが上条さんの考えなんだよね。
――大覇星祭編では上条さん最大の敵・吹寄さん。
阿部:仲良いですよねー、あのふたり。吹寄さんは世話してあげてる感出してるんですが、端から見てると夫婦漫才。ほのぼのとした日常代表ですよね。だからこそ巻き込まれたときに、上条さんがあんなに怒ったんじゃないかな。
井口:日常代表という意味では美鈴さんもですよね。
阿部:美琴も将来ああなるのかと、ちょっと心配に(笑)。良い意味で大雑把、大人の余裕を漂わせつつも面倒見がよさそうで。あのお母さんを見るに、美琴のポテンシャルはすごく高いんだと思いますよね。
井口:まだ中学生だから発展途上なんだよ。
阿部:きっと本人に言うと怒るんでしょうけど(笑)。一方通行さえ手玉に取っちゃうすごい人だからなあ、あの人は。
井口:すごくパワフルだよね、今後もワンポイントで出てきてほしい。当麻のお父さんも鼻の下伸ばしますよね、美琴母恐るべし。
阿部:いやいや、お母さんの詩菜さんも綺麗だよー。喜久子さんだよ喜久子さん!
井口:それは中の人(笑)。お姉さんといえばオリアナさんもすごかったよね。服装!
阿部:興奮しているのかい?(笑)男を手玉に取る典型的魔性の女というか、追撃戦というエピソードだったこともあって飄々として底の見えないお姉さんでしたね。そこは『禁書目録』らしく彼女なりの信念があったんですけど、年上キャラが珍しいこともあって、面白かったですね。
井口:ゲスト声優の方々って、初めて現場にいらしたとき、当麻がいっぱいしゃべってすごいね!って反応が多少なりともあるんですが、オリアナ役の柚木さんはこれまでにないお姉さんな反応だったんですよね。「ん~、がんばったね」っていうオリアナとはまた違う包み込み方に照れる阿部さんは、見ててちょっと面白かったです。
阿部:いやーもう、2期はいろいろ包み込まれて良かったですよホントに。もうちょっと早くあってもよかったと思います。こういうご褒美!(笑)
井口:2期になってやっとだもんね。
阿部:ホントだよ!(笑)
井口:リドヴィアさんはギャップがすごかった。最初は顔も出てこなくて、興奮したらどんどん盛り上がって舞い上がっていくさまは、見ていて印象的。
阿部:それまでは理知的な人なのかなって印象だったもんね。
井口:うん。ギャップも『禁書目録』らしいというか。でもホント、お姉さんキャラは印象に残ってますね。みんなとにかく胸が大きかった!(笑)
阿部:え、そこがすべてなんですか?(笑)
井口:すごくお色気シーンが増えた気がするんですよね。狙ったわけではなくそうなっちゃった流れではあるんですけどオルソラとインデックスのシャワーシーンとか。どっちの
扉もお風呂だった!って。
阿部:あれはひどかった……。ノックしろよって話なんですが(笑)。
井口:とにかく、お色気お姉さんには負けられません。色気より食い気で頑張っていきたい!
阿部:それじゃダメじゃん!?
――あとはふたりの共通の友人、氷華ですか。
阿部:井口さんが阿澄ちゃんと親友なんですが、一緒にいるときのテンションがおかしいんですよ。
井口:へへへへへへ。
阿部:こんな感じ(笑)。
井口:アフレコとのときもロビーのソファーで、肩をくっつけて一緒にくつろいでました。
阿部:っていうくらい仲良しなんですけど、それがお芝居にも良い意味でも反映されてる気はしますね。だから「私はバケモノだから」っていう氷華の言葉は心に刺さっていて、やっと2期で登場したらあの状況じゃないですか。でも、あの氷華の姿を見たとき、上条さんの表情は驚きというか絶望から入っている。彼女には右手では触れられないじゃないですか。えー、どうするんだよってホントにもう八方ふさがりのところを、氷華自身が操られてるにもかかわらズ周りの人たちを救ってくれたっていう、あの希望の見え方すごい好きですね。
井口:インデックスも氷華を想ってるからこそ助けたいしって、そこはより気持ちを込めて。えへへへへ、いやあ楽しかったです。
阿部:キャラ変わってるよ(笑)。だから、ドラマCDでもいいから、1期の地下街で遊んでたときみたいなエピソードは見たい。
井口:そういえばドラマCDに出てないもんね、氷華。やりましょう! いいよね!!
――仲良しすぎる(笑)。では最後に『禁書目録Ⅱ』最終回を見終わったファンの方々にメッセージをお願いします。
井口:『禁書目録』がこんなに長く続く作品になって、すごくうれしいです。これは全部応援してくださっているファンのみなさんのおかげで、本当にありがとうございました。2期は終わってしまいましたけど、原作は『新約』という形で新たに始まりましたし、そこで登場してくる新しいキャラクター、2期でもまだまだ謎のままだったキャラクター、もっともっと見ていたいキャラクターがたくさんいますので、またドラマCDだったりOVAだったり、それこそゲキジョウバァーン!でも!! お会いしたいです。イベントだったりラジオだったり、いろいろなところで本当に愛されているのを強く感じる作品です。みなさんひとりひとりに直接ありがとうを言うことはできないですけど、その想い、感謝の気持ちを作品という形でお返しできるように、井口自身も頑張っていくので、これからも『禁書目録』応援よろしくお願いします。目指せ劇場版! そしてインデックス育成ゲーム化!(笑)
阿部:個人の願望ダダ漏れじゃないか……。
井口:阿部さんは今後、よりお姉さんに包まれる話が出てくるといいですね!
阿部:あぁ…至福ですね(笑)。じゃなくて、ここまで広がりを見せる作品もホントに珍しいと思います。原作ノベルがあってコミックがあって、スピンオフコミック『超電磁砲』
があって、両方アニメ化して、『禁書目録』は2期までやって。無事に最終回までやりとげられたことも含めまして、この調子でいけばもっともっと広がっていくんじゃないかなという気はしますし、井口さんも言った通り、それは愛してくれるみなさんがいるからなんだなと思います。ホントに、スタッフさんの愛も、もちろん僕らもキャストのみんなも、この作品に愛をもって取り組んでおります。愛があれば、きっともっと発展していくんじゃないかなと。鎌池先生の執筆速度も半端ないので、ストックが尽きることもきっとない!
井口:今すぐ1年くらいできますよ、多分!(笑)そう、スタッフ愛。最終回のアフレコ後に、プロデューサーの中山さんが、こうやってファンの皆さんに支持していただけている作品なので『超電磁砲』ともどもライフワークにしていけたらって目標を掲げてらっしゃったんです。これはすごく素敵な言葉だなと思って、私自身も次に繋げていけるよう、より頑張っていこうと改めて思いました。
阿部:僕の声優人生、この作品から始まったと言っても過言ではないです。その作品にこんなに長く関わることができてうれしいですし、ホントに僕もライフワークにしたいです
よ。『禁書目録』はかけがえのない作品であり、上条当麻はかけがえのない役ですから、もっともっと大きくしていきたい。それにはやっぱり、みなさんの応援も必要ですので。ぜひぜひ今後も楽しみにしつつ、応援よろしくお願いします。
井口:ありがとうございました!